Q.破産してしまうと、労働者への賃金はどうなってしまうのか

問題の所在

 経営者の方が破産等の会社の閉鎖を決断できない事情の一つとして、労働者の方々の賃金がどうなるのかという点がよくあります。

 破産、清算のいずれにしても、会社を閉鎖する手続きですので、労働者との雇用契約を解消することにはなります。もっとも、未払いとなっている債務を支払ってから会社を閉じる解散と異なり、債務を支払わずに会社を閉じる破産の場合には、労働者への支払いができ無くなってしまうのではないかと思い、破産の決断ができない経営者の方も多々おられます。

しかし、こうした無理な頑張りをしてしまうと、かえって多数の債権者に迷惑がかかる事態になりかねず、ともすれば、訴訟や労基署の立ち入り等にも発展しかねません。

 こうした労働者に生じる不利益を少しでも軽減するべく、労働者への未払いについて、一定額ですが立て替えて支払う制度(これを未払賃金の立替払い制度といいます。)が設けられています。

未払賃金の立替払い制度とは

会社が倒産状態になった際に、会社に代わり、労働者健康福祉機構が未払賃金の一部を立て替えて支払う制度です。この制度を利用すれば、破産をしても最低限度は労働者への支払いが補償されます。

この制度の利用には、原則として会社が破産手続きを行わなければならないとされています。労働者の生活を考えれば、無理に会社を引き延ばすよりも、早めの決断をし、補償が早く労働者に及ぶようにすることも1つかと思われます。

未払賃金の立替払い制度を利用するための条件

この制度を利用するためには、以下の条件を満たす必要があります。

①会社が法律上または事実上破産状態にあること
②会社が労災保険に加入しており、かつ、問題となる労働者がその会社で1年以上働いていること
③問題となる労働者が、会社が破産した日の6か月前から数えて、2年の間に退職していること
④会社の破産状態について、管財人の証明や労働基準監督署の確認が得られていること
⑤未払いの額が2万円以上であること

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